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    「おい、早く早く」

    「先生、どうしなさる?着て行きますかい」

    「なあ、ジョン!」

    これでは房一も後もどりしないではいられない。馬は今片耳を後に立て、時々それを動かせていた。それは見ているだけでも美しい生き物だつた。房一にはしなやかなだが強い張りのある首が疾駆の時にどんなに強く前傾し、どんなに直線的になるか、どんなに風を切り、どんなに躍動するか、まざまざと目に浮ぶやうであつた。

    「どうしなさつた」

    房一は目を上げて何か訊きたさうにした。それを押へるやうに、

    「御機嫌だつたね」

    と、全然ここの温泉を軽蔑しきっていたそうで、婆さんが絶え間なくタオルで全身摩擦しながら意地ずくでつかっている温泉とは何度ぐらいだろうと興にかられたが、調査もせずに引越した。

    根津はだまって答えなかった。その翌日、彼は城外で戦死した。

    「何にしても、えらいこつてしたなあ」

    「うん、行くよ。――だが、夕方でいゝだらう」

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